札内川十ノ沢〜ナメワッカ分岐〜春別岳〜1917m峰〜1903m峰〜九ノ沢下降

日付

 平成14年921日〜24 

同行者

 L:神原正紀 大津明弘

タイム

 

 21  幌別19:00  札内川ヒユッテ着23:50
 
22日 七ノ沢出合発6:40  八ノ沢出合着8:20
     九ノ沢出合着
9:50  十ノ沢出合着11:55
     
十ノ沢カール着15:00
 23
日 十ノ沢カール発5:30 主稜線着7:45
     ナメワッカ分岐着
8:15春別岳着9:25
     ・
1917m11:30
     
九ノ沢下降地点(ザックデポ)12:50 
    
1903m14:10  九ノ沢下降地点着15:15
     九ノ沢C地(1400m台)着
16:35
 24
 C地発5:30  九ノ沢出合着10:45
     八ノ沢出合着11:35  七ノ沢着13:45  幌別着22:00

 

 

今回の山行は@十ノ沢カールで泊りたい Aまだ歩いていない(主稜線)ナメワッカ分岐〜春別岳を繋ぎたい B・1903m峰を登ること C初めての九ノ沢を下降したい
以上の目的をもって入山した。

■9月21日 いつものように夫等の退勤を待って19時に家を出る。
23:50分日勝峠経由で札内川ヒユッテに到着。車1台あったが、中には誰もいなかった。

■9月22日晴れ 多少睡眠不足であったが、天気も良いので張り切って準備し、七ノ沢駐車場に向かう。そこには車が5〜6台あり、カメラの準備をしている人がいた。そして登山者の為の新しいトイレが設置されていた。登山者名簿に記入して七ノ沢から本流に降りるが、石がゴロゴロと広い河原を埋めていて、以前あった最初の渡渉が無くなっている。
 その代わりと言ってはおかしいが、標識テープが随所に下がり道標が付いている。
 入山者の多さが推察された。八ノ沢出合、九ノ沢出合でそれぞれ休憩し、十ノ沢出合いに向かうと、先のかまびすしいほどのテープはゼロになり、あれほどあった巻き道もなく深山の沢の雰囲気になってきた。

   
十ノ沢小滝の連続

十ノ沢カールのテント場


 十ノ沢出合いを見落とさないよう地図を読む。出会いは「これが十ノ沢?」と半信半疑になるほど明瞭ではない。十ノ沢に入りコンター1100m〜1250mにかけては小滝が連続し始める。殆ど直登可能だが、以前一緒にこの沢を下っている大津さんも記憶にないらしく「こんなとこあったっけ?」と首を傾げる。程なく着いた十ノ沢カールは身の丈以上の叢林が生い茂り、今まで見た他のカールとは趣きが異なっていた。この視界の悪さではクマの姿は一見できない。もしかして、バッタリ出遭わなければいいのだが。
 クマの心配を除けば誠に快適なキャンプ地で、2〜3張りのスペースのすぐ傍らには清らかな水が流れ、申し分ない場所を提供してくれている。
 カール壁の裾野は岩を侍らせ、「さて、どこから取りつくか?」そんな心配を抱いて早々と眠りについた。

■9月23日 カールにはガスが立ち込め、稜線がまるで見えない。昨日定めておいたルートのカール壁めがけて出発し始めると、なんとクマの糞の多いこと。半端な数ではなく、今まで見た最高の量である。いつかテレビでみた銀毛色のクマはきっと生きているのだろう、と思うとホイッスルを吹くにも一段と力が入った。
 カール壁の岩と草地の間が一番歩きやすいが、クマも同じとみえ、糞がまるで数珠のように連なっている。
 岩の割れ目で走り寄るものがあり、「あれ!ナキウサギ!」 ナキウサギが自分から走り寄ってくるなんて、手を伸ばせばすぐに届きそうな所で、ジッと身を硬くして動けないでいる。人間様を知ってか知らずかパニック状態になったらしい。
「ネズミでないのか?」後の夫には見えないらしく、なんとロマンのないことを言うのだろう。顔の丸い、耳も丸いしっぽのないネズミっているものか。
 一段と濃くなったガスの中に、ルンゼ状のルートを見つけ稜線に出る。
 空身でナメワッカ分岐を目指すと、分岐からは北のエサオマンはガスで見えないが、ナメワッカ岳に続く支稜線がよく見えた。H5年
8月、夫と2人でブッシュをかき分け、真夏の太陽のもと、畳半分の残雪に助けられたあの時の山行が懐かしく思い出された。
 春別岳で小休憩。ここからは・1917m峰を挟んでカムエクが聳え立ち、日高山脈一番の(主稜線では)岩稜が続いている。そして、この春登ったカムエク南西稜が鋭い歯を剥きだして屹立する様が手に取るように見えている。これらの山々は過去の充実した思い出として、深く私の心の中に生きている。

   
北の九ノ沢カール   1917m峰(主稜線)への瘠せ尾根

カムエクと南西稜


 九ノ沢カールは北と南の
2つのカールから成り、北のカール底には今が盛りの紅葉にあやどられているが、反面、南のカールは石が多く、彩りが少ない。コルでザックをデポし、1903mを登るべく、這い松の続く瘠せ尾根を南下する。JPから岩混じりのフカフカとしたお花畑の中を20分少々でそのピークに着いたが、このピークに是非お登りなさいと小樽在住の一原先生に勧められてから数年、いまやっと約束を果たしたことになる。
 これで目標としてきた1400m以上のピークを全部クリャしたことになる。
 長い時間を要したが、その間山を楽しめた。至福の思いである。
 コルまでの下山時、大津さんは銀色に輝くスコップを拾った。
 南の九ノ沢カールは解析が激しくなかなか良いテント場が見つからず、あちこち探しながら下り過ぎてしまった。すでに沢に入ってしまい余計にテン場が見当たらず、左岸にようやく見つけたが、先ほど拾ったスコップがこんなところで役にたつとは……
 スコップで整地してようやく今夜の安住の宿を確保した。
 少し痛かった左手首が腫れ出して、曲げるも伸ばすも出来なくなった。別にどうした原因もないのに、普段、楽をしているとこうなるのかもしれない。
 サジカルテープで固定して眠りについたが、明日は最難の滝の下りがあるというのにこの手首で大丈夫だろうか?ロープやはたしてブッシユはつかめるか?

■9月24日 曇ってはいるが行動には差しつかえない空模様。午後には雨の予報がでているのでのんびりとはしていられない。荒い沢を降りはじめて約2時間後、大滝に着く。
 上段の
20mを懸垂、中段の20mも懸垂。下段の滝は両岸が狭まり深い滝壷をもって落ちているため、懸垂で降りるとそのまま滝壷に落下する。私が足を引っ張り、中段をゴボウで登り返して左岸を高巻きして下段の滝の下に着き、もう一度懸垂で沢床に着地した。

  
九ノ沢下段の滝の前

懸垂で沢床に降りる


 男性二人なら難なく降りられるものを、余計な手間と時間をかけてしまった。
 九ノ沢出合いには間もなく到着。テーピングの効果あってか手首の痛みも和らぎ、ここからは本流になるため差ほどの不安もなく下降できる。水量も少なく快適な沢の下降を続けて念願の山行を終えることができました。